「自然鍼灸学」の基本的治療の体系は下記の6つである。
1 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼法(治効メカニズム−4)
2 腹部刺鍼(治効メカニズム−1・2・3)
3 背部刺鍼(治効メカニズム−1・2・3)
4 治療に必要な反応を引き出し易い場を作るための治療(治効メカニズム−2・3)
5 症状に対する治療(治効メカニズム−2・3・4・5・6)
6 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼法(治効メカニズム−4)
基本的治療体系
浅刺・呼気時・坐位の刺鍼法(治効メカニズム−4)
@自律神経機能を高めることにより改善できる歪を改善させる。
A上記により改善できない歪が残るのでこれにより治療を必要としている部位を明らかにさせる。
B自律神経機能を高めることにより、続いて行われる治療に対する反応性を良くする。
腹部刺鍼(治効メカニズム−1・2・3)
この刺鍼は、以下の目的で行われる。
@腹壁の緊張を解く(治効メカニズム−1・2)
A全身の体液分布の調節(治効メカニズム−・3)
B消化、吸収、排泄機能の調節(治効メカニズム−・3)
背部刺鍼(治効メカニズム−1・2・3)
@背筋の過緊張を解く(治効メカニズム−1・2)
A胸腔内、腹腔内臓器に対し、これらを支配する交感神経ルートを介しての調節(治効メカニズム−3)
治療に必要な反応を引き出し易い場を作るための治療(治効メカニズム−2・3)
したがって、腹部刺鍼、背部刺鍼と書けるが、2-1-4で対象にするのは、必ずしも共通性が高くない種々の歪みを意味する。
この刺鍼は、以下の目的で行われる。
筋の緊張、冷えなどの歪を改善させ、刺鍼に対する反応し易い体の状態をつくる。多くは歪に直接刺鍼する。
腰痛患者が、入浴しても肝腎の腰部が温まらないという状態などに対する処置である。
症状に対する治療(治効メカニズム−1・2・3・4・5・6)
症状を直接ねらいとする治療である。
それぞれの症状により種々の刺鍼が行われる。具体的な例としていわゆる腰痛症について示す。
1 全身反応を用いて
1−1 浅刺・呼気時・坐位の刺鍼法(治効メカニズム−4)
腰部の筋緊張の程度により呼吸回数を10ー20回の間で選ぶ。緊張の強いときに多めにする。体力の弱い人は少な目である。
治効メカニズム:自律神経機能が高まることによりコントロールの範囲が広がり、解けにくい筋緊張を解くことができるようになる。反応は直後に期待できる。また、自然治癒力を高めるので効果が数日後までにも期待できる部分もある。
1−2 臥位での低周波鍼通電療法(治効メカニズム−6)
治効メカニズム: 全身反応としては、交感神経機能の抑制による筋の過緊張の緩和による効果が期待できる。合谷ー孔最が最も良い。四肢末端部の方が全身反応を良く起こす。
2 局所反応を用いて
2−1 局所刺鍼 局所反応としては、刺鍼部位の筋緊張の緩和と血液循環の改善が期待できる。 腰部の筋緊張部に刺鍼する。
2−2 局所低周波鍼通電療法 局所への刺鍼に、低周波鍼通電療法を用いると解けにくい腰痛に効果的である。
治効メカニズム: 局所反応と低周波による揺さぶり効果が重なる。 局所の低周波療法は、時間要素が長い方が揺さぶり効果が大きくなる。 置鍼よりも低周波の方が刺激効果が上である。
3 遠隔部反応を用いて
3−1 委中への刺鍼刺激 深く刺鍼し雀啄刺激をする。交感神経を遠心路とする反射で、メカニズムの3である。
まとめ:
2の局所反応を用いるのが最も直接的であるが、全身的に交感神経機能を抑制して過緊張を和らげる方が良い場合もある。そのときは、1の全身反応を用いる。また交感神経サイドからではなく、自律神経活動を高めて過緊張を改善させるというルートの方が良い場合もある。そのときは、1−1を用いることになる。 1、2、3は、それぞれメカニズムが違うから、組み合わせて用いる方が実際的であり、私は、多くの場合、1、2、3を組み合わせて用いる。