「プラシーボ ニセ薬のホントの話」制作BBCイギリス2014

616NHKBS1放送の「プラシーボーニセ薬の本当の話―」関係者にあまりに見られていません。ぜひ見てほしいと思います。
放送内容を伝える文字にしました。
オンデマンドなどでより多くの治療に、医療に関わる人に放送を見てほしいと思います。

1 マンチェスター(イギリス)

 クリス・ビ−ティー(アベリストウィス大学)

 サプリメント(実はトウモロコシの粉)の効果試験という設定

 一流自転車選手を対象に、

 1回走った後にサプリメントを服用し、

 4時間の間隔を置いてもう1度、全速力で走る。

 半数以上の選手が、2回目に好タイム。

 スポーツ選手でプラシーボ効果を確認。

 

2 デッビット・カルムズ医師

 脊椎骨折の患者に医療用セメントを注入する手術

 上記の手術で、手術をした場合と手術をしたと思わせて、手術のふりをするニセ手術をする。

 被験者ボニー・アンダーソン 転倒し脊椎を骨折。

 この試みに参加した130人の患者で、

 本物の手術とニセの手術を受けた2群で

 ・痛みの緩和の程度。

 ・症状と身体機能の改善。

に関しても大きな違いはなかった。

 同様の手術はオーストラリアでも行われたが、そこでもニセの手術は、過去100万人以上に行われてきた本物の手術の効果と同じ程度であった。

 治療をするふりをしただけで患者の症状は改善したのです。見せかけの治療でもこれほど効果があるのはなぜでしょうか。

 

3 プラシーボ効果はどのようにして生まれるのか

3-1 チェルビニア(イタリア)アルプス、酸素濃度の低い地でプラシーボ実験、

 ファブリツイオ・ベネデッティ(トリノ大学教授)

 プラシーボ効果が、想像の産物なのか、実際に化学的変化が起きているのかを確かめる。

 高山で酸素濃度が低いと血中酸素濃度が低下し、脳内のPGE2  という神経伝達物質の濃度が上昇し痛みなどの高山病症状がでる。

 プラシーボで酸素のないボンベを用い血中酸素濃度が上がらないのに

脳内PGE2  が低下した。血中酸素濃度が高まって脳内PGE2が低下したのではなく、プラシーボ効果によりPGE2  が低下したものである。生理的変化が起きているのである。プラシーボ効果を計測できるということである。

 

3-2 コロラド州ボルダー(アメリカ)

 トール・ウェイガー(コロラド大学教授)

 プラシーボが脳内にどのような変化を起こすのかを調べる。

 腕に、@ローションと Aリドカイン(麻酔薬)、Bリドカインといって実際にはローションを塗り、3カ所に同じ程度の熱痛刺激を@、A、Bの順序で与える。痛みをどのように感じるかで効果を判定する。

 Bの刺激でAのリドカイン程度の痛みのプラシーボ効果が認められた。

 脳内モルヒネといわれるオピオイドが脳内のいろいろな部位で放出される。 中脳水道灰白質は、オピオイドによる痛みのコントロールに重要な部位。これはプラシーボ効果がモルヒネが痛みをコントロールするときと同じ経路を使っていることを示している。ニセの薬もローションも手術も私たちの脳内で鎮痛剤を放出することができるのです。プラシーボ効果を期待できるのは、痛みだけではない。私たちの脳は無数の化学物質を作り出すことができる。それらの作用によって痛みが治まったり、活力がでたり、眠りにつくことができる。 ニセの薬は鎮痛剤やアルコールなどと同じように作用すると考えられている。

 薬が効くのは私たちの体内に薬が効く受容体があるからです。受容体は、私たちの脳が作る天然の化学物質に反応するように進化してきた。つまりニセの薬は、私たちの身体で進化してきた化学的メカニズムを活用することで効果を生み出している。脳内の化学物質でです。

 

4 科学者たちは、ニセの薬にどれだけのことができるのかを明らかにしようとしている。

 痛みのように患者の主観に左右されるものに限定されるのか。それとも

 

4-1 バンクーバー(カナダ)

 被験者ポール・パターソン 

 パーキンソン病の症状がニセ薬で効果がある。

 試験に参加、ニセ薬を飲んで30分から45分で突然薬が効いてくるのが感じられた。

 ブリティッシュコロンビア大学教授

 ジョン・ストーゼル

 パーキンソンでは薬を飲まないと脳内のドーパミンが欠乏している。患者によく効く薬だといって実際にはニセの薬を飲ませ撮影した画像で脳が大量のドーパミンを放出していることが分かる。

 複数の研究でニセの薬がパーキンソン病の症状を短期間ながら緩和することができることが明らかになっている。

 

5 ニセの薬が効果を生むには、ニセの薬がなぜ本物だと信じなければいけないのか。

 トール・ウエイガー(コロラド大学教授)

 全ては期待感と関係している。未来への期待が関係している。登山で命綱が安全を守ってくれることで、生体の機能を高める。心と身体のつながりが生体反応を生む。

 恐怖や希望が私たちの身体の反応を誘発する。化学物質が放出され生理変化が起きる。プラシーボの効果を私たちが期待すれば、脳内に化学物質が放出され生理機能が変化するのである。

 

 科学者たちは期待することにどれだけの力があるのかを解明しようとしている。これまでにニセ薬で痛み、うつや不眠症、吐き気、注意欠陥障害の症状などが緩和できることが分かっている。全ては期待感に関わっているので、薬剤の大きさ、形状、カプセル、色、値段の高いものなどの要素が効果にも関わる。また、ニセの薬や手術のふりでできることには限界がある。骨折を治したり腫瘍を小さくすることは不可能です。(起きる可能性もある 西條)

 

 それでも科学者たちは効果を望める分野でプラシーボを最大限に活用できる方法を模索している。

 

6 ニセ薬や手術のふりにも問題がある。ウソをつく。プラセボ効果を得るには、本物だと思い込ませなければならない。

 

6-1 ウソをつかずにプラセボ効果を期待するには

 ハーバード大学(アメリカ)は、2010年プラシーボ効果を利用した生活改善をテーマとした研究を開始した。テッド・カプチャク(ハーバード大学教授)は、そのプロジェクトの責任者である。「この20年くらいでプラシーボ研究は爆発的に増えましたが、やるべきことはまだまだあります。その一つは、プラシーボ効果を研究して、人々がより健康に生きられる方法を見つけることです。」

 教授はプラシーボ効果について基本的な仮説に疑問を投げかけました。

 プラシーボ効果を得るためには患者は本当にだまされなければならないのか。

 リンダ・ボナーノは、16年前からIBS:過敏性腸症候群に苦しんでいます。症状があまりにひどいときには外出をためらうこともあります。彼女は他の80人のIBS患者と共に実験に参加することになりました。薬を手渡されるとき、これはニセ薬だがあなたの自然治癒力で効くかもしれない。と。えっ、ニセ薬、私は医療助手の勉強を終えたばかりで、効くわけないじゃないと思いましたが、分かりましたといい、家に帰り服用を始めました。そして3日後、痛みが消えていることに気づいたんです。おなかは痛くないし、しょっちゅうトイレに駆け込むこともなくなりました。それまで抱えていたひどい症状が全部消えてしまったんです。こんなことあり得ないと思いました。まさかニセ薬で症状が治まるなんて。

 ニセだと分かって薬を飲んで、症状が改善した被験者は、リンダ一人ではありませんでした。結果を見て驚きました。予想を超える数字でした。ニセの薬で症状が十分軽減した人は62%でした。何も飲まなかった人は30%程でしたから、大きな違いです。しかし、この実験は数週間で終了しました。ニセ薬がなくなるとリンダの症状は再発します。

 リンダ「ニセ薬の服用期間は3週間だったと思いますが、その間は快調でした。服用をやめると症状は全部戻ってきたんです。落ち込みました。」リンダはニセ薬を手に入れようとします。しかし求められませんでした。有効成分の入っていない薬でなぜ症状が消えたのか。

 カプチャン教授たちの研究はそれを解明するには至っていません。しかし、一つの仮説を立てました。

 「医師たちの診察を受け、1日2回薬を飲みすることで身体が何かを認識し、健康になっていったのではと考えられます。私たちの身体は、自分が意識的に感じている以上の何かを感じ取っているのです。」

 リンダ「なぜ効くのか分かりません、きっと何か理由があるんでしょう。私は症状を全部消してくれる何かを求めているんだと思います。強く望めば望み通りになるということでしょうかね。」

 ニセの薬が効いた理由は謎のままです。小規模で短期的なこうした結果を基に本物の薬をニセ薬に置き換えても良いということにはもちろんなりません。とはいえ、この結果は、「だまされないと効かないというプラシーボ効果の前提条件とされてきただまされないと効かないという考え方に疑問を投げかけました。」

6-2 では医師が患者への接し方を変えるだけで患者にプラシーボ効果をもたらすことは可能なのでしょうか。

 その答えを見つけることが私たちの身体の自然治癒力を解明する鍵になるかもしれません。

 カプチャプ教授は、実験を計画しました。

 過敏性腸症候群の患者たちが、実験のために集められ、2つのグループに分けられました。

 第1のグループでは鍼灸師と患者のやりとりが厳しく制限されました。鍼灸師に患者との会話を禁じたのです。鍼灸師は名前を名乗りこれから鍼治療をすることと患者とコミュニケションをとらないことを要請されていることだけを患者に告げます。

 第2のグループでは鍼灸師が患者に思いやりのある態度で治療を施しました。治療する際に暖かくサポートする態度を見せます。病気によって生活がどう変わりましたかとか。家族や友人との関係や病気が仕事にどう影響していますか、などと聞くんです。

 どう改善したいのか話していただけますか、どんなに大変か分かりますと共感を示します。患者の身体に触れたり、静かに思いやりを示す気持ちを見せたりするのも大切です、

 治療が上手く行きますなどと患者が前向きになるような言葉もかけます。効果はあります。症状が軽くなることを願っています。

 

 この実験は医師と患者の関係がプラシーボ効果をもたらすかを調べるものなので、両軍とも本物の治療は行いません。患者には鍼治療すると伝えますが、皮膚に刺すことのできないプラセーボ鍼です。このプレセーボ鍼は日本の有明医療大学鍼灸学科の高倉教授開発のものです。

 

 思いやりのある態度で接してもらえば患者はよく見てもらったと思うでしょう。患者は優しく接してもらっているだけです.果たしてこれで症状は改善されるのでしょうか。ところで、この実験で医師と患者の関係が重要であることが明らかになったのです。症状が十分に改善されたと回答した割合は、

 第1のグループは42%

 第2のグループは62%でした。

 この結果から医師と患者のやりとりがプラシーボ効果を非常に大きくすることがあるといえます。

 カプチャプ教授の研究は医師が振る舞いや言葉遣いを変えるだけでプラシーボ効果を生み出す可能性があることを示しています。

 

  ハーバード大学のプロジェクト研究はまだ始まったばかりですが、このプラシーボ効果を利用すれば、薬や手術などの効果もより高めることができることを示唆しています。

 プラシーボの研究は初期段階で、まだ分からないことが沢山あります。

 ・なぜ人によって反応に差があるのか。

 ・遺伝子が関係しているのか。

 ・プラシーボ効果を活用するために医師は具体的に何をする必要があるか。

 

 アベリストウィス大学クリス・ビーディ

 しかし、プラシーボ効果があるということは間違いありません。

 極めて懐疑的だった人たちでさえ、今は、プラシーボ効果があることを認めています。プラシーボ効果など作り事と決めつけていた20,30年前からすれば状況は変わりました。

 

 ブリティッシュコロンビア大学教授ジョン・ストーゼル

 プラシーボ効果は確かにあります。

 私は本物の薬を使った治療でプラシーボと同じくらいいい効果を得られれば治療が上手く行っていると考えています。

 

 私たちにかつてないほどの健康をもたらした薬や手術ですが、それらは単独で作用しているわけではないのかもしれません。

 

 カプチャック

 プラシーボ効果はあらゆる医療行為と密接に関わります。最初から最後までずっとですね。

 

 

 自然鍼灸学の研究は身体の仕組みと環境との関わりに関する、自律神経からの身体の仕組みに関する研究です。そして身体の治す力・調節する力に関する研究です。

 プラシーボ効果を個体差なく、より良く誘起する方法を示しています。

 M4:浅刺・呼気・坐位の刺鍼は、その典型例です。ハーバード大学の研究の遙か先を行っています。